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ミノムシのように体を麻縄で巻かれたドロシーは、気が付くと馬車の中にいた。 純白の馬車は、広い学園内を学園の有力者たちが移動するのに使用される。 馬車の中で目覚めた瞬間、暴れ出したドロシーをウィリアムの従者たちが拘束したのだ。 「いい加減にしてくださいよ、お嬢さん。大人しくしてくれないと、俺たちがウィリアム様に怒られるんですから」 「そのウィリアム様はどこにいるんだ! いいから、あの男を出せ! 私にこんな仕打ちをして、ただで済まされると思うなよ」 ドロシーはそう言うと、藁色の髪をした男の顎に勢いよく頭突きをした。 「ぎゃふっ! ……グ、グレイル! 早くエメラルドロッジまで行ってくれ。このままじゃ、俺の体が持たない」 涙目になりながら、藁色の頭の男は御者席の方へ話しかけた。 グレイルと呼ばれた男が振り返る。 濃灰色の長髪をした生徒は、ウィリアムと同じ赤いネクタイをしている。 どうやら上級生のようだ。 くすんだ青い双眸が冷たげに見えるのは、精巧なまでに整った顔立ちのせいだろう。
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