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「――安心するがいい。すでにさっきからロッジに着いている」
「だったら、どうして早く言わないんだ!」
「お前たちが騒がしくしているから、大人しくなるまで待ってみようかと」
「……相変わらず、空気の読めない男だな! もういい。アンバー、お嬢さんをエメラルドロッジへ運ぶぞ」
御者席にいる男子生徒と話し終わると、藁頭男は言った。
「了解――」
背後でぼそぼそと答える声がしたかと思うと、ドロシーの体が浮かび上がった。
脇に手を入れられ、足の方を藁男が持ち上げる。
「うわっ、何しやがる!」
じたばたと暴れるドロシーを二人の男が馬車から担ぎ出す。
外に出た瞬間、目の前に広がったのはエメラルド色の世界だった。
「すごい……」
ロッジの入り口の門を抜けると、鮮やかな深緑の植え込みが左右に続いていた。
左右対称に刈り込まれた植え込みが迷路のように連なっている。
深緑の壁の向こうに見えたのは、美しいエメラルド色のロッジだった。
降り注ぐ陽光が翡翠でできた壁に反射して眩しいほどだ。
幾つかの棟に分かれたロッジは、円筒状の蝋燭を重ねたような不思議な形をしている。
昔、本で見たブライドケーキにも似たロッジには、遠目でも分かるほど緻密な彫刻がほどこされていた。
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