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唇に押し付けられた柔らかな感触に、一瞬、何が起こったのか分からなかった。 驚いて逃げようとするドロシーの肩を、セイリュウが押さえつける。 ドロシーはようやく口づけをされたのだと気づき、セイリュウを突き飛ばす。 「何するんだ!」 思い切りドロシーに胸を押され、やっとセイリュウはドロシーから離れた。 ドロシーは震える唇を噛みしめ、セイリュウを睨みつけた。 「――お前の口から、あいつの名前は聞きたくない」 セイリュウは何を考えているのか、表情も変えずにそう言った。 「意味わかんないっての。ふざけんな、バーカッ!」 ドロシーは混乱する頭で子供の用に叫ぶと、ロッジに向かって走り出した。 「最悪だ」 ロッジまで、一度も振り向かずに走り込むと、一目散に私室へ駆け込んだ。 乱暴に唇を袖口で拭うと、髪飾りを胸に抱きしめてベッドに倒れた。
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