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「冗談なんかじゃないぞ。ドロシーが俺を好きになってくれたら、俺も寂しくない。利害関係は一致してないか? 二人でいれば、こうして冷たい手を温めてやることもできるだろう? 冷たい川を思い出しても、この温もりを思い出せば、一人じゃないって思い出せるだろう?」 ウィリアムは両手でドロシーの手を包み込んだ。 「――そうかもしれないな」 ウィリアムの温度が、手のひらから伝わってくる。 (なんか、くらくらする。――けど、嫌じゃない) 心臓にポッポと火が灯ったように温まる。 速まる鼓動が、体中に熱い血液を運んでいく。 (涙が出そうなくらい、目が熱い……) ドロシーはもっとウィリアムの熱を感じたくて、強く手を握り返した。 「ありがとう、ウィリアム」 一言つぶやくと、ウィリアムは満足そうに笑った。 そうかと思うと、ドロシーの顎に手を添えた。 近づいた顔にドロシーが驚く暇もなく、二人の影が重なった。
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