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「――お嬢、いいんですか?」
「は? 何がだよ」
「見てくださいよ。旦那ったら、お嬢以外の女の子とあんなにくっついちゃってますよ」
「だからなんだよ。踊ってんだから、当たり前だろ。私達だって、おんなじようにくっついてんじゃん」
「いや、そうなんですけどね。……なんだ、つまんないの」
ラノフはがっかりしたように下唇を突きだす。
勝手につまらないと言われ、ドロシーは訳が分からず苛立った。
いっそのこと、足でもワザと踏んづけてやろうか――そう思った時だった。
「あれ――」
視界の端に、見覚えのある人影が見えた。
ドロシーは踊りながらも、入口の方に目を向ける。
そこにいたのは、セイリュウだった。
他の学生たちとは違い、制服姿のままだ。
(なにしてんだろ? 舞踏会には来ないって言ってたのにな)
気が変わったのだろうか。
ドロシーはセイリュウの様子をうかがう。
暫く観察していると、彼はこちらに気がついた。
視線が合った瞬間、ドロシーは声をかけようとした。
だが、その前にスッとセイリュウは大広間から立ち去ってしまった。
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