プロローグ・始まりは銀の靴

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薄暗い地下室。 固く閉ざされた扉。 頼りなく燃えていた灯火は既に消えてしまった。 「おい、ここから出せ! 聞こえてるんだろ!」 扉を激しく叩きながらドロシーは怒鳴った。 何度目かも分からない叫び声が冷たい室内に虚しく響く。 扉に打ち付けた拳に鈍い痛みが走る。 古びた扉の棘が刺さったようだ。 「……くそっ!」 ドロシーは顔をしかめ、扉を蹴り飛ばした。 壁にもたれるように座り込むと、怒りで誤魔化していた空腹を思い出す。 「ミートパイが食べたい……」 呟いた拍子に小さく腹の虫が鳴った。 空腹と寒さに既に動く気力もない。 薄汚れた手のひらを温めようと息をふきかける。 冷たい素足を擦り合わせ、ぼろきれのようなドレスを抱え込むように体を抱きしめた。 (なんだか、眠くなってきやがった……) 瞼が徐々に重くなり、頭が沈んでいく――その時だった。 「……アンタ、誰だ」
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