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「――これじゃあ、まるで本物の花嫁じゃないか」 ドロシーは姿見の前で呟いた。 滑らかな純白の絹に、エメラルド色の炎が淡い光りが映り込む。 裾を持ち上げると、動きに合わせてドレスが滑らかに揺れた。 胸元にはブローチが輝いている。 純白のドレスを着たのは初めてではない。 ずたずたに引き裂かれたドレスを思いだし、急に心細くなってきた。 「ぜんぜん、嬉しくない」 あの時、本当は美しいドレスに胸が躍って仕方なかった。 普通の少女のようにはしゃぐのが恥ずかしく、ついそっけない態度を取ってしまったのだ。 本当はウィリアムにドレス姿を褒められたことが嬉しかった。 「――私を普通の女の子にしてやる、か」 ドロシーは胸元に手を当てた。 そこに光るブローチに触れると、ウィリアムとセイリュウの顔を思い出す。 「行ってくるよ」 一人呟き、部屋を出た。 廊下に控えていたのはこの城の使用人だった。 人形のような感情のない微笑を携えた薄気味の悪い男だ。 「お似合いですよ、ドロシー嬢。そのドレスはオズ大王からの贈り物です。オズ大王が見れば、さぞお喜びになるでしょう」 「ありがとう、ございます」 かたちだけのお礼を聞き、使用人は回廊を歩き出した。 ドロシーは慣れないドレスで必死にその後を追いかける。
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