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長い回廊を抜けた先にある階段部屋の扉を開くと、らせん階段が現れた。
灯りが一つもないというのに、階段は黄金に輝いている。
眩い光りにドロシーは目がくらむ。
「この階段の先にオズ大王がお待ちです。――さあ、行ってらっしゃい」
使用人は階段部屋の中へドロシーを促した。
「……この先に、オズ大王がいるのか」
思い出すのは、ほの暗い地下室にうずくまっていた時の記憶だ。
寒さと空腹に震えるドロシーに、オズ大王は輝く銀色の靴を差し出した。
あの時は、その輝きが希望の光に見えた。
(この靴が、私とオズ大王をもう一度引き合わせてくれた。いや違う。オズ大王はここに私を連れてくるために、この靴を渡したのか)
ドロシーはドレスの裾を高く持ち上げ、階段に足を踏み入れた。
黄金を踏みつけると固い音がらせん階段に反響した。
「お気を付けて行ってらっしゃいませ」
見送りの言葉をかけた使用人の声を背に、ドロシーはらせん階段を登った。
黄金の階段を登るにつれて、地上から引き離されるような奇妙な感覚に包まれていく。
上下左右から反射する輝きに足元をすくわれ、何度も階段から転げ落ちそうになった。
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