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「しかし、君には唯一の取柄がある。それは、この銀貨を見ればわかる。――君には強い野心がある。そして、その野心を叶えるための力がある。それだけで、俺の伴侶となるには相応しい。俺も君と同じだからな」
「……アンタもオズ大王に叶えて欲しい願いがあるってことか」
「そういう事だ」
ウィリアムは頷く。
「話は分かった。けどな、頼みごとをするにしては、ずいぶんな態度じゃないか」
「ふむ、確かにそうだね」
うむ、うむ、と頷きながらウィリアムはドロシーに近づくと縄を解いた。
「さあ、これでお互いにフェアな話し合いを――」
「誰がするか、ボケェ!」
ドロシーは銀の靴で風を起こした。
猫のように跳び上がるとウィリアムを飛び越え、ドアの方へ駆けていく。
「はっ! 騙したのか!」
ウィリアムの声を背にドロシーはドアを開こうとノブを握った――だが、
「なっ、あ、開かない!」
いくらノブを回してもドアが開かない。
仕方がない、とドアを蹴破ろうとしたその瞬間、ドアが勢いよくひとりでに開いた。
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