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「立派な淑女に成長したようで、我々も嬉しいよ。本来なら、十一歳から魔法学園で全うな教育を受けるはずだったというのに、東の魔女のせいで君は野良犬のようだったからな」
「ああ、そうだったな。東の魔女から解放した後も、ずいぶんと保護が遅れてしまって申し訳ないことをしたよ。あの時、東の魔女に抵抗されなければ、彼らも悲惨な結果にならずに済んだだろうに」
ドロシーに憐みの目を向け、男たちは口々に言った。
マザーの名誉を貶され、ドロシーは奥歯を噛みしめ、必死に感情を押し殺そうとした。
「ちょっと待てよ。今なんて言った? 私をマザーから解放したってどういう意味だよ」
それは、街中でも聞いた言葉だ。
ドロシーはそこで、ある考えにいきついた。
「まさか、アンタたちが――」
言葉に詰まり、その先をいうことが出来なかった。
わなわなと唇を震わせるドロシーをよそに、男は胸を張って誇らしげだ。
「我々はオズ大王の花嫁である娘を、悪い魔女から解放したのだ。それは、新世界の導――ラグナロクに記されている」
「悪い魔女から解放するってなんだよ。だれが、そんなことを頼んだんだ!」
ドロシーは叫んで目の前の男の胸倉を掴む。
表情を崩さない男はまるで機械だ。
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