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薔薇色の壁に、白と金を基調とした家具、白いレースの付いた天蓋。
家具には薔薇やつる草の繊細な彫刻がほどこされている。
天蓋をよく見ると、ラッパや笛を吹く天使の彫刻が飾られていた。
一面に広がる薔薇色の空間にため息が出る。もちろん悪い意味でだ。
「こんな落ち着かない部屋で、これから暮らさなきゃなんないのかよ」
「あれ、駄目でした? せっかく、ウィリアム様がお嬢のために用意したのに。それはもう、楽しそうでしたよ。家具の一つ一つを選ぶ度に、頬を乙女のように薔薇色に染めて」
「うわぁ……」
容易にその光景が浮かぶのがあの男の怖い所だ。
さながら、乙女系男子と言ったところだろうか。
用意された部屋は普通の婦女子なら、手を叩いて喜びそうな意匠だった。
「引くのはまだ早いですよ。ほら、あっちに隣の部屋へ続くドアがあるのが分かりますか?」
藁男は部屋の奥にあるドアを指さした。
「あのドアの向こうは、ウィリアム様の部屋ですからね。何か用があれば、すぐにウィリアム様に会えますよ」
「うわぁ……」
すぐに街で錠前を買ってこよう。
そして、あのドアは一生開かずのドアにしてしまおう。
ドロシーが心に決めていると、従者の三人がドロシーの前に並んだ。
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