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「お帰り、ドロシー。さあ、お家に帰ろう」
ウィリアムはパチンと指を鳴らした。
現れたのは銀色の靴だ。
(そうか――この言葉が私はずっと欲しかったんだ)
握った手のひらよりも、涙の伝う頬よりも温かいその言葉をドロシーは噛みしめる。
震えるほどの幸せが全身を駆け巡り、血液が心臓から押し出されるのが分かった。
ドロシーは銀色の靴を履き、ウィリアムを見上げた。
「ただいま」
その言葉を紡ぎだした瞬間、ドロシーたちを渦巻く突風が包み込んだ。
巨大な竜巻に舞い上げられ、向かうのはエメラルド色の世界だ。
生まれて初めて生きていると感じた場所へ、ドロシーは帰って行った。
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