147人が本棚に入れています
本棚に追加
/267ページ
「おい、アンタら面白い話してるじゃんか。私にも聞かせてよ」
「いや、別に、俺たちは――」
男子生徒は視線をそらした。
急に怖気ついた彼らを鼻で笑うと、ドロシーは立ち上がる。
男子生徒は射抜くように見下ろすドロシーに怯え、喉を鳴らした。
「なんだよ、言いたいことがあるなら、はっきり言ったらどうだ」
「俺はただ、ウィリアム様が急にオズの花嫁をお決めになったって、聞いたから、その」
僅かに震える男子生徒に近づき、ドロシーは卓上に手をついた。
眼前に迫ったドロシーの顔に、男子生徒は声にならない悲鳴をあげる。
「文句があるなら、表に――」
そこで、思い出したのはウィリアムの「銀貨狩り、喧嘩禁止令」だった。
ドロシーはぐっと言葉を飲み込む。
「……くそっ!」
苛立ちと共に舌打ちをすると、踵を返す。
「おい、何処に行く気だ! 授業が始まるぞ」
「気分が悪い。今日は帰る」
教室を出ようとすると丁度やって来た教師に呼び止められたが、ドロシーはその声に振り向くことなく足早にその横をすり抜けた。
最初のコメントを投稿しよう!