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ウィリアムは革張りの手帳を開いた。
中にはドロシーについての情報が書き込まれている。
出身地、容姿、性格、学園での成績――その他には、彼女がオズの花嫁に相応しい女性になるための改善点。
それらに改めて目を通していく。
新たに改善点を手帳へ書き込んでいると、窓の外に気になる人影を見つけた。
(おや、あれは――)
校舎を出て行く人影に目をこらす。
離れていても分かる、真っ赤な髪は見間違えるはずがない。
「まったく、困った子だね」
庭園を歩くドロシーを見下ろしながら、ウィリアムはため息を吐いた。
けれど、その顔にはうっすら笑みが浮かんでいる。
頬杖をついて窓の外を見るウィリアムに、後ろの席にいるグレイルが言った。
「どうかしましたか、ウィリアム様」
「どうやら、お姫様が鳥かごから抜け出したみたいだ」
「はい?」
首を傾げるグレイルをよそに、ウィリアムは立ち上がり、手をあげた。
「どうした、アリソン」
教室に入って来たばかりの教師が、ウィリアムに気づいて言った。
「先生、俺のことは気にせず朝礼を始めてください」
ウィリアムはさらりと告げ、教室の外へ足を向ける。
「いや、気にする気にしないじゃなくて……って、待ちなさい!」
ひらひらと手を振りながら出て行くウィリアムの背に、教師の声が虚しく響いた。
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