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「サボりとは、感心しないな」
背後から話しかけると、ドロシーが振り向いた。
瞬時に嫌悪に満ちた色が顔に滲む。
「アンタだって、サボってんじゃん。人のこと言えないだろ」
「俺は窓から見えた君を追いかけて来ただけだ。白のオズとして、素行の悪い生徒を見過ごすわけにはいかないからね。それに、君はオズの花嫁だ。生徒たちの手本になるような行動を心がけるべきだろう?」
違うかい、と付け足すとドロシーは顔をそむけて舌打ちをした。
ゴミ虫でも見るかのような視線に、ウィリアムは「やれやれ」と首を振る。
「まったく、君はどんな教育を受けてきたんだ。そこらの野良猫だって、もっとおしとやかに振る舞えるんじゃないか?」
また、ウルサイなどと文句を言われるだろう。
いつもの調子で、ドロシーが噛みついてくると、ウィリアムは思っていた。
だが、ドロシーはいつまでも言葉を返してこなかった。
「ドロシー……?」
不思議に思い、ウィリアムはドロシーの顔を窺う。
ドロシーは目を伏せ、俯いていた。
長い睫毛が頬に影を落としている。
気丈に結んだ唇は泣き出す寸前の幼子のようにも見えた。
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