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不安になり、ウィリアムはドロシーの肩に触れようとした。 「――野良猫の方が、まだ綺麗な育ち方してるかもな」 やっと口を開いたドロシーに、ウィリアムの手が止まる。 ドロシーは顔をあげるとウィリアムを睨みつけた。 隠すことない拒絶の視線に、ウィリアムは胸が痛むのを感じた。 「教育してくれるような親なんて私にはいなかった。物心ついた時から、周りにいたのは薄汚い浮浪児と、その浮浪児を利用するドブネズミみたいな大人しかいなかったからな」 淡々と話すドロシーの青い眼は虚ろにくすんでいた。 「君の生まれはロンドンのパイ屋だと聞いてるが? そこの女主人が養母だろう?」 「マザーに引き取られたのは、私が十歳の時だ。十歳って言っても、正確な年かどうかは分からないけどな。マザーに引き取られる前、浮浪児たちを牛耳ってたコソ泥の男から聞いただけだからな」 ドロシーは皮肉に満ちた顔で笑う。 痛々しい表情にこちらまで息が苦しくなる。
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