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朝露に濡れる木々や花々が色鮮やかな光を放っている。
左右対称に彩られた庭園を抜けると、そこには広大な学園が広がっていた。
王立魔法学園――魔法使いの卵たちの集まる学園は、早朝から今日も賑やかだった。
「いけっ! 今日こそは悪魔から銀貨を奪い返せ!」
「ジャック! 私の銀貨を取り戻して!」
光を反射する不思議なエメラルド色の校舎から、何人もの生徒の囃し立てる声がする。
生徒たちは中庭を駆け抜ける男子生徒に声援を送る。
幾何学模様の迷路のような庭を、男子生徒は一心不乱に駆け抜けていた。
声援とは反対に、男子生徒の顔に滲むのは大量の汗と焦りの色だ。
彼の背後を追うのは炎の化身のような少女だった。
「――私から逃げられると思うなよ!」
燃え盛る炎の如き髪を振り乱した少女――ドロシーは地面を蹴った。
足元が銀色の光を放ち、旋風が沸き起こる。
飛び上がったドロシーに向かって、男子生徒は人差し指を突きつけた。
指先から飛び出したのは、ドロシーの髪に負けない真っ赤な炎だ。
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