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「マザーは立派な人だった。だから私は、マザーのためなら何でもする。たとえ、もう一度獣に戻ってでもな」 ドロシーは自分に言い聞かせるように言った。 ウィリアムはドロシーのまっすぐすぎる双眸に、思わず魅入ってしまう。 自分に似ているからだけではない。 単純に、目の前の少女をもっと知りたい。 そう思ったのは、どうしてだろうか。 理由が分からない中で、一つだけ分かったことがある。 「俺は君を獣じゃなくて、素敵な女性にしたい。――だって、君は可愛い女の子じゃないか。獣のフリをするのはやめるんだ。マザーが君を人間にしてくれたのなら、俺は君を普通の女の子にしてあげる。いや、君を立派なファーストレディにしてみせるさ」 ウィリアムはドロシーの手を取り、その甲に唇を落とした。 「可愛い俺のお嫁さん。覚悟しておくんだね」 とたんに、ドロシーはぽかんと開いていた口をぱくぱくと動かし始めた。 そうかと思うと、熟れた野イチゴのように顔を染めた。
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