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「な、何しやがる!」 声を裏返したドロシーが面白くて、ウィリアムは噴きだした。 「この、馬鹿男!」 ドロシーの声と共に、強い衝撃と痛みが頬に走る。 視界の端に、腰を回転させて拳を突き出したドロシーが見えた。 「ぐわっ!」 頬に強烈な一打をくらったウィリアムは、背後に吹き飛ばされた。 完全に油断していたせいで、受け身を取ることもできずに仰向けに倒れる。 「今度変な真似したら、ただじゃおかないからな。あばよ」 腕組みをしてウィリアムを見下ろし、ドロシーは捨て台詞を吐き捨てると立ち去った。 「……痛い。けど、嫌じゃない」 痛む頬を押さえながら、ウィリアムは微笑んだ。 この状況をグレイル達に見られたら、きっと気持ち悪がられるだろう。 それでも、顔が緩んで仕方がないのは、先ほどのドロシーの表情を見たからだ。 「なんだ。やっぱり、女の子じゃないか」 ドロシーの赤い頬を思い出すと、それが伝染したようにこっちまで頬が熱くなってきた。 それを、きっと頬を殴られたからだとウィリアムは自分に言い聞かせた。
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