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「そうだ、その前に髪を綺麗に梳かしてやろう。どうせ、今日も寝癖たっぷりな髪をしているのだろう――って、どうしたのだ、その頭は!」
ワクワクとした表情で櫛を構えた瞬間、ウィリアムはドロシーの姿に唖然として叫んだ。
「どうして髪をキチンと梳かしているんだ。しかも、すでに制服に着替えているじゃないか。い、いつもなら、だらしなく寝間着を着て寝癖たっぷりな頭を掻いている頃だろう」
「アンタは相変わらず、失礼な奴だな。私だって、一人で起きて髪くらい自分で梳かせるんだよ。子供じゃあるまいし」
「なるほど。では、ようやく俺の指導の成果が出てきたということか! ドロシーもオズの花嫁としての自覚が出てきたのだな。俺は嬉しいぞ」
「いや、そんな大げさなことでもないだろ」
一人で感動して目元をハンカチで拭うウィリアムに、ドロシーは冷静に言う。
「ではこの調子で、食事の作法も完璧にしていくぞ!」
「張り切ってるところ悪いけど、今日は朝食はいらないからな」
「な、なんだってー!」
ウィリアムはのけ反り、頭に雷が落ちたように衝撃的な顔をした。
朝からロッジに響く声にうんざりしながら、ドロシーは両耳を押さえる。
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