2章・黒のオズ

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(この、かまってちゃんが……) 男のくせに面倒な奴、と心の中で毒づく。 実際に口に出すと、余計面倒なことになるのでやめておく。 「この前、授業をサボったから、罰として早朝に教室の掃除をしなくちゃなんないんだよ。――別に、アンタと食事をしたくないわけじゃないっての」 ドロシーは乱雑に髪を掻き、ウィリアムに説明する。 「本当か!」 ウィリアムはパッと顔を明るくした。 瞳に溜まった涙のせいで余計に目が輝いて見える。 こうして、一瞬にして元気になるところは嫌いじゃない。 「それならば、仕方がないな。アンバー、パイの用意はできているか?」 「できてる、けど――」   いつの間にか部屋にいたアンバーは、ドアの前で小さなバスケットを持っていた。 「おお、それか」 ウィリアムはいそいそと、アンバーからバスケットを受け取る。 それを差出し、ドロシーに向かって言った。 「いってらっしゃい、ドロシー」 キラキラとした満面の笑みを向けられ、ドロシーは面食らう。 (――ああ、そういうことか) 期待に満ちた視線の意味が、すぐに分かった。 それでも、その期待に応えることが気恥ずかしくて、らしくなく狼狽えてしまう。 けれど、ここでこの言葉を言わなければ、再びウィリアムが面倒なことになる。 少し考えてから、ドロシーはバスケットを受け取った。
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