2章・黒のオズ

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「行ってくる」 そう言ったとたんに、ウィリアムの笑みが固まる。 徐々に見開かれる目と共に、頬が紅潮していく。 「ど、ドロシー、今、何て?」 「なんだよ。行ってくるって言っただけだろ。別に普通だろ」 「そ、それはそうだが。いや、普通の女子ならば普通のことかもしれないが、相手はドロシーだ。まさか、返事が返ってくるとは思わなかった。いつものように、キモイ、ウザい、馬鹿なこと言ってんじゃねぇ、この豚野郎! ぐらい言われることを覚悟していたのだが」 「アンタは私をなんだと思ってるんだ」 両ほほを押さえて興奮して話すウィリアムに、ドロシーは額に青筋をたてる。 「いつまでも馬鹿馬鹿しいことしてないで、アンタらも遅刻しないようにな。――じゃあな、私は行くからな」 これ以上は付き合いきれない。 ドロシーはひらひらと手を振りながら、校舎へ向かった。 「いってらっしゃい! 気を付けるんだぞー!」 背後から聞こえた声に一度だけ振り返ると、ウィリアムが嬉しそうに両手を振っていた。 (つーか、行先は最終的には同じだろ) 呆れながらも、思わず笑ってしまった。
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