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「行ってくる」
そう言ったとたんに、ウィリアムの笑みが固まる。
徐々に見開かれる目と共に、頬が紅潮していく。
「ど、ドロシー、今、何て?」
「なんだよ。行ってくるって言っただけだろ。別に普通だろ」
「そ、それはそうだが。いや、普通の女子ならば普通のことかもしれないが、相手はドロシーだ。まさか、返事が返ってくるとは思わなかった。いつものように、キモイ、ウザい、馬鹿なこと言ってんじゃねぇ、この豚野郎! ぐらい言われることを覚悟していたのだが」
「アンタは私をなんだと思ってるんだ」
両ほほを押さえて興奮して話すウィリアムに、ドロシーは額に青筋をたてる。
「いつまでも馬鹿馬鹿しいことしてないで、アンタらも遅刻しないようにな。――じゃあな、私は行くからな」
これ以上は付き合いきれない。
ドロシーはひらひらと手を振りながら、校舎へ向かった。
「いってらっしゃい! 気を付けるんだぞー!」
背後から聞こえた声に一度だけ振り返ると、ウィリアムが嬉しそうに両手を振っていた。
(つーか、行先は最終的には同じだろ)
呆れながらも、思わず笑ってしまった。
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