147人が本棚に入れています
本棚に追加
驚いてたたらを踏んだドロシーは、焼却炉の燃え盛る火炎に突っ込みそうになる。
とっさに焼却炉の横へ体をずらして地面に手を突き、受け身を取りながら倒れた。
瞬時に起きあがると、辺りに目を配る。
(なんなんだよ、一体!)
焼却炉を囲む木々の隙間に人影が見えた。
どうやら、複数人いるようだ。
「……てめぇら、何しやがる!」
「噂には聞いていたけれど、本当に抵抗しないようね」
女生徒が両手を前へ突きだし、意地悪そうに笑った。
魔法を放ったのはこの女生徒らしい。
その背後には、数人の男女がいる。
全員の顔に覚えがある。確か、銀貨集めの際に戦った生徒たちだ。
「なんだよ、逆恨みか?」
「逆恨み? いいえ、違うわ。私達は私達のものを返してもらいに来ただけよ」
「私達のもの? もしかして、銀貨のことか? だったら、持ってないぞ。あれは全部、ウィリアムに没収されたからな。返して欲しければ、ウィリアムに言ってくれ」
これ以上、面倒事に巻き込まれたくない。
ここで、喧嘩をすることもできないのだ。
もどかしい気持ちをぐっと抑えたことは、誰かに褒めて欲しいくらいだ。
怒りに拳を握りながらも踵を返したドロシーは、自分の成長に感動した。
最初のコメントを投稿しよう!