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「あばよ」
怒りが爆発する前に、短く捨て台詞を残して立ち去ろうとした――だが、
「銀貨なんて、もう、どうでもいいのよ!」
「え?」
女生徒の声がして振り向いた瞬間、眼前に鋭い氷柱が飛んできた。
ドロシーはそれを手刀ではじき落とす。
「――アンタらいい加減にしろよ。今なら笑って許してやるから、さっさと失せろ」
強気な言葉を吐きだすが、内心冷や汗をかいていた。
どうやら向こうは、ドロシーが手を出さないと確信しているようだ。
生徒らを睨みつけると、女生徒の後ろにいた男子生徒が前に出てきた。
「俺達が取り返したいのは、俺達の魔法使いとしてのプライドだ。――俺たちはお前と違って、何年も学園にいるんだ。何年も魔法を学んできたというのに、たった数か月、数週間、魔法を習った女に銀貨を奪われる気持ちが分かるか」
「なんだよ、やっぱり逆恨みじゃないか」
「逆恨みなものか。これは恨みなんかじゃない。魔法使いとして、やっと見つけた居場所を俺たちは奪われたんだ。奪われた居場所を奪い返して、何が悪い!」
居場所を奪われた。その意味が分からず、ドロシーは眉間に皺を寄せる。
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