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染み一つない純白の制服に、上級生の証である赤いネクタイ。
それよりも一番に目についたのは、金のカフスだった。
「第六十代白オズ――ウィリアム・アリソン」
ドロシーが呟くと、男は甘ったるい蜂蜜のような笑みを浮かべた。
形のいい唇が弧を描き、右側に黒子のある目じりが緩やかに下がる。
「俺の名前を知っているとは、光栄だな」
「当たり前だろ。アンタはこの学園の王子さまじゃないか。知らないわけがない」
ドロシーは敵意を隠すことなく、白のオズ――ウィリアムを睨みあげた。
白のオズ――その称号は、魔力のある者達が集められたこの学園の最高階位の一つだ。
学園に入学すると、生徒たちは二つのロッジに分けられて生活する。
白と黒のロッジをまとめているのが、最高権力者であるオズと呼ばれる生徒だ。
白のロッジで暮らすドロシーにとって白のオズは、従うべき存在だった。
間近に見るのは初めてだが、そこにいるだけで光を放つ硝子細工のように眩しい男だ。
「馬ではなく、猫か。誰にでも牙を剥けるのはやめた方がいい。綺麗な顔に傷がつくぞ」
ウィリアムは艶やかな髪を掻き上げ、涼しげに言う。
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