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「それで、こんなところで何してんだ?」
「ウィリアム様に、頼まれて――」
「頼まれて?」
黙り込んだアンバーに、ドロシーは何故だか嫌な予感がした。
「ドロシーがセイリュウ様に近づかないように、見張ってろって」
「あの野郎、そんなことをアンバーに頼んだのか……!」
先ほど、こそこそとしていたのはこのせいだったらしい。
「悪いな、アンバー。お詫びにこれ、やるよ」
ドロシーは焼きたてのパイを皿に乗せ、アンバーに渡した。
素直に皿を受け取ったアンバーは、こてんと首を傾げる。
「これって……」
「パイだよ。ロンドン一まずいパイ!」
ロシーが胸を張って言うと、アンバーは照れくさそうに頬を染めた。
「ありがとう」
嬉しそうな表情に、ドロシーは面食らう。
「それにしても、アンタたちも大変だな。あの、面倒くさい男の面倒を見ないといけないなんてさ。私だったら、今頃ロッジを出て行ってるよ」
アンバーの隣に座り、ドロシーはパイをかじる。
相変わらず、ぱさぱさで美味しくない。
「ドロシーはウィリアムさまの事、嫌い?」
同じようにまずいパイを食べながら、アンバーは尋ねた。
「え? ……そうだな」
直球な質問にドロシーは言葉に詰まった。
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