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オウムは窯の隣の食器棚にとまった。
《至急、理事長室に来なさい――至急、理事長室に来なさい》
それだけを告げると、オウムは飛び去って行った。
「ドロシー……」
アンバーがか細い声で呼びかける。
そわそわと体を動かし、何か言いたげだ。
恐らく、先ほど一瞬だけ見た目は、不安げに揺れているだろう。
「そんなに心配そうにするなよ。呼び出しなんて、日常茶飯事だからさ。まあ、何したかは覚えてないけどさ。ウィリアムにこのことが知れたら小うるさいだろうし、早く行くよ」
食べかけのパイを口に放り込み、ドロシーは立ち上がる。
「行ってらっしゃい。がんばって」
アンバーは二つ目のパイを食べながら、ドロシーを見送った。
ロッジに帰ってくるころには、パイが無くなっているかもしれない。
(まずいパイなんて誰も食べたくないだろうし、別にいいか。……それにしても、今回はホントに何も覚えがないんだけどな。今更、授業をサボったくらいじゃ、理事長室になんて呼び出されないだろうし)
地下にある厨房から、上階へ続くらせん階段を上る。
暗い地下から出た瞬間、眩しい光りに目が眩んだ。
ドロシーは光でチカチカとする目を擦りながら、理事長室へ向かった。
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