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薄暗い室内に鈍い音が響く。
火がくべられら大きな窯から、薪が爆ぜるたびに小さな火花が飛び散った。
ドロシーは窯の火加減を見ながら、卓上に置いたパイ生地に延べ棒を叩きつける。
その時、背後から感じた人の気配がして手を止めた。
「そんなところで、何をしているんだい」
聞こえた声に、ドロシーは延べ棒をパイ生地に叩きつけて目元を素早く拭う。
「……見て分かんないのかよ、パイを作ってんだよ」
背後からウィリアムが近づいてくる気配がする。
ドロシーは感情を押し殺して振り返った。
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