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校舎の中心にある時計塔から予鈴の鐘の音が聞こえる。
その音に驚いた鳩が、一斉に時計塔から飛び立った。
ウィリアムは教室から、ぼんやりと旋回する鳩を見ていた。
憂いのある横顔で小さく息を吐く。
思い出すのは今朝の光景だ。
『鮮血の悪魔』獣のような女だと噂では聞いていたが予想以上らしい。
エメラルティ国に来る前、ウィリアムはアメリカに移住した貴族の家で育った。
戒律を重んじる父親に幼い頃から厳しく躾けられ、礼儀作法を嫌というほど叩き込まれた。
そんなウィリアムにとって、ドロシーの存在は卒倒ものだった。
(あのお嬢さんには困ったものだ。俺の花嫁になるというのに、自覚がなさすぎる。一度、みっちり教育してやらなくてはならないな。骨が折れるが仕方があるまい。――いつかは、エメラルドの都に住むのだから、外に出ても恥ずかしくないようにしなくては)
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