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エメラルドロッジの地下には、ロッジの住人達の食事を作る厨房がある。
その厨房を借りて、ドロシーはパイを焼いていた。
窯の火を調節しながら、焼き色を付けていく。
「……そろそろか」
窯からパイの乗った鉄板を取り出して卓上に置き、パイを冷ます。
鍋つかみを外していると、ふとどこかから視線を感じた。
ロッジで働く使用人たちならば、黙ってこちらをずっと見ているのもおかしい。
ドロシーは不審に思い、振り返る。
「誰だ!」
「うわっ……」
一階に続く階段の影にいたのは、アンバーだった。
驚いた拍子に尻餅をついたアンバーに、ドロシーは目を丸くする。
「何してんだ、アンバー」
「ドロシー、さま……」
「ドロシーでいいって。アンタ、デカいなりしてるけど同級生だよな? 他の奴らと違って、アンタは良い奴そうだ」
そう言うとアンバーは「分かった」と、控えめにうなずく。
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