70人が本棚に入れています
本棚に追加
楽しいパーティ
秋哉が言っていた、
「家から全員追い出したいから、カズ、お前を呼びたいんだ」
の理由が明らかになって、カズエは大きなため息をつく。
こんなことだろうとは思っていたが、もう少し色っぽい展開を期待していた自分が、ものすごくむなしくなる。
秋哉らしいといえば秋哉らしすぎて、ため息をついて諦めるしか仕方がないではないか。
それでも、
「メシは奢るから」
という秋哉の言葉に少しばかりの希望を抱けば、それも、
「スズネのやつが、用意してから出かけるって言いだしてるからな。カズと買い出ししてから連れてくって言っとく。マックでいいよな」
クリスマスなんだから、せめてケンタにしてくれと心の中で突っ込みつつ、
「なんでもいーよ。よかったら私作ろーか」
「作れんのか!」
意外にも秋哉が食いついてきたのでびっくりする。
うかがうように、
「たいしたものは出来ないよ。調理実習でやったのなら、なんとか……」
すると秋哉は、
「十分だ。よかったースズネってばとれぇクセにそんなことばっか言い出すから。あいつに用意させたら、いつまでたっても出かけられなくなる」
別にカズエの手料理を喜んだわけではないらしい。
「……はぁ、もう」
秋哉のデリカシーのなさには、ホントうんざりする。
それでも家で何度かハンバーグの練習をしたのは、カズエの乙女ごころだ。
お陰でカズエの家族は、わけの分からないスパイスが投入された微妙な味のハンバーグとか、玉ねぎの入れすぎで形がまとまらなくなった、そぼろもどきのハンバーグとかを毎晩食べるハメになった。
ハンバーグヘルパーは、乙女の強い味方。
最初のコメントを投稿しよう!