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「あー、俺はいち抜け。デートの予約が入ってる」
真っ先に手をあげたのは夏樹だった。
「デート?」
「そう。クリスマスイブ、年に一度の聖夜だぜ。俺がフリーだなんて誰が言った?」
夏樹は意味深にニヤリと笑う。
すると冬依も、
「ああボクもパス。長島くん家に招待されてるんだ」
「長島くん?」
聞き慣れない名前に鈴音が首を傾げると、
「うん、2こ下の子。最近仲良くなったんだ。イブの日に家でクリスマスパーティをするから、泊まりがけで来てくださいって言ってもらえたの」
「へぇ、2こ下の子から」
冬依の以外な交友関係の広さに鈴音は顔をほころばすが、春一と夏樹は、冬依の口から飛び出した長島の名前に、苦虫を噛みつぶしたような顔になる。
しかし冬依は素知らぬ顔のまま、
「行ってもいいよね春兄。長島くんのお父さんやお兄さんからも是非来てくれって言ってもらえたし」
お知り合いなの? とクルリと振り向く鈴音に、春一は慌てて表情を取り繕う。
「……冬依のPTAで一緒だから」
ウソではない。
まさか長島の家はヤクザで、その兄といえば吾妻貴久だなんて、とても鈴音には聞かせられない。
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