パーティ準備

10/11
前へ
/40ページ
次へ
間違っても冬依を行かせる気にはなれないが、 「他にカエデやユッキー、ふーちゃんも招待されてるんだよ。みんなで一晩中ゲームするんだ。だからいいでしょう」 なんてうるうる瞳でお願いされると、本当に困ってしまう。 子どもの交友関係に、家の職業で差別するなど、子どもの見本となるべき大人として失格の行いだ。 それでも、 「泊まりはダメだ。非常識だ」 なんとか春一が言うと、 「えーどうしてだよ。春兄や夏兄もよく知ってる、長島くんのお兄さんが一緒なんだよ」 冬依は痛いところをついてくる。 この聡明な末っ子は、やっぱり全部知っているのだ。 「いつ、あいつと話したんだよ」 夏樹が冬依の頭を抱え込んでこっそり聞けば、 「夏兄がボクの体で学校に行った後だよ。善藤さんを通して、連絡を取ってもらったんだ」 善藤とは、長島家の未成年の子どもの教育係を勤める男の名だ。 冬依と夏樹が入れ替わってしまった時に事件解決の立役者となり、長島家に少なからずとも影響できる、油断のならない男。 そんな危険な男と冬依が、兄たちの知らぬ間に連絡を取り合っていた。 「世の中情報戦だよ夏兄、長島くんの側にいるボクが、一番掴んどかなきゃならない尻尾じゃないの」 にんまり笑う冬依に、 「……チッ」 夏樹は横を向いて舌打ちをする。 そして、 「ダメだ春。こっちはお手上げ」 夏樹は春一に降参だという風に両手をあげ首を振ってみせる。 冬依はパッと顔を輝かせて、 「わーい。お泊まりでクリスマス会だ」 無邪気に飛び跳ねてみせ、鈴音は鈴音で、 「良かったね冬依くん」 一緒に手を取り合って喜んでいるが、 『あの家に降るのは雪じゃなくて血の雨だし、来るのはサンタはじゃなくて、きっと鉄砲玉だぞ冬依』 これくらいの忠告は、しておいた方がいいろうか。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加