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間違っても冬依を行かせる気にはなれないが、
「他にカエデやユッキー、ふーちゃんも招待されてるんだよ。みんなで一晩中ゲームするんだ。だからいいでしょう」
なんてうるうる瞳でお願いされると、本当に困ってしまう。
子どもの交友関係に、家の職業で差別するなど、子どもの見本となるべき大人として失格の行いだ。
それでも、
「泊まりはダメだ。非常識だ」
なんとか春一が言うと、
「えーどうしてだよ。春兄や夏兄もよく知ってる、長島くんのお兄さんが一緒なんだよ」
冬依は痛いところをついてくる。
この聡明な末っ子は、やっぱり全部知っているのだ。
「いつ、あいつと話したんだよ」
夏樹が冬依の頭を抱え込んでこっそり聞けば、
「夏兄がボクの体で学校に行った後だよ。善藤さんを通して、連絡を取ってもらったんだ」
善藤とは、長島家の未成年の子どもの教育係を勤める男の名だ。
冬依と夏樹が入れ替わってしまった時に事件解決の立役者となり、長島家に少なからずとも影響できる、油断のならない男。
そんな危険な男と冬依が、兄たちの知らぬ間に連絡を取り合っていた。
「世の中情報戦だよ夏兄、長島くんの側にいるボクが、一番掴んどかなきゃならない尻尾じゃないの」
にんまり笑う冬依に、
「……チッ」
夏樹は横を向いて舌打ちをする。
そして、
「ダメだ春。こっちはお手上げ」
夏樹は春一に降参だという風に両手をあげ首を振ってみせる。
冬依はパッと顔を輝かせて、
「わーい。お泊まりでクリスマス会だ」
無邪気に飛び跳ねてみせ、鈴音は鈴音で、
「良かったね冬依くん」
一緒に手を取り合って喜んでいるが、
『あの家に降るのは雪じゃなくて血の雨だし、来るのはサンタはじゃなくて、きっと鉄砲玉だぞ冬依』
これくらいの忠告は、しておいた方がいいろうか。
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