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というわけで、邪魔されてなかなか練習の成果が発揮できないでいたカズエだったが、秋哉の家族の仲が良さは、見ていて感心する。
夏樹は秋哉を構わずにいられないらしいし、鈴音はお母さんみたいに心配が全開だ。
そして春一は、
「何かあったら、すぐに俺に電話して」
生肉のつまみ食い発言といい、秋哉のことをどんな風に見ているのだろう。
もしかして、信用がないのだろうか。
「それから19時には家に帰ること。秋哉に家まで送らせる」
いや、ただ常識人なだけだ。
想定外の行動ばっかり取る人たちの中にいると、ちょっと普通の感覚がわからなくなる。
カズエが姿勢を正して、
「わかりました」
と答えると、春一はゆるやかにまなじりを下げて笑ってくれた。
「秋哉を頼むよ」
「はい!」
この人に言われると、緊張もするが心が弾むのはなぜだろう。
苦手に思っていたはずなのに、期待されるとちゃんと応えたくなる。
任される喜び。
「はい、こちらのことは心配せずに、どうぞ楽しんできてくださいね」
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