楽しいパーティ

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意外なくらいの秋哉の怯えように、カズエは仕方なく腹をくくる。 人間誰しも、これだけは無理、というものはあって当たり前だ。 無神経を絵に描いたような秋哉でも、Gはダメということだ。 思い返せば春一の、 「秋哉を頼むよ」 の言葉はこれを予兆していたのか。 普段は男の子の代表みたいな顔をした秋哉が、こんなに怯えるなんて、よく考えればちょっとかわいい。 「――わかった。やってみる」 カズエは覚悟を決めてそっと立ち上がる。 秋哉もカズエの後ろをついてきた。 でも苦手なのはわかったから、オンブするみたいに背中にしがみつくのはやめてほしい。 これではイザというとき、……逃げられない。 ラックの中の新聞紙を取って丸めて、一度手のひらの上で固さを確かめる。 一発でキメないと、逆に大惨事になる。 カズエはまだ壁際でおとなしくしているGをキッと睨みつけて、 「いい? 行くよ」 「お、おぉ」 ところが、Gが飛んだ。 警告も予告もなく、いきなり羽音を鳴らして飛び上がった。 「ぎゃああああ!」 「キャァ――、ア?」 Gより秋哉の大声の方にびっくりして、声も引っ込む。 同時に背中から力任せにしがみつかれて、心臓がドクンと跳ね上がった。 「……ア、アキ」 しっかりと抱きつかれて、カズエがちょっと体を揺すったぐらいでは、秋哉はびくともしない。 ついでに肩口に秋哉の頭が覆い被さって、柔らかい髪がカズエの頬をくすぐる。 「アキ……」 普段は意識したことなんかないが、こうしていると体格の違いをまざまざと実感させられる。 背中に当たる秋哉の硬い胸板、太くたくましい腕。 「……ちょっと、離して」 自然、声も弱々しいものになった。 胸元に回された秋哉の腕はしっかりと絡みついて、カズエの力では外せない。 「……アキ」 ドクンドクンと心臓が大きな音をたてて、秋哉にも聞こえてしまうんじゃないかと思った。
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