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「……カズ」
秋哉のささやく息がカズエの耳にふっとかかった。
ため息にも似た吐息がカズエの背筋をゾクリと震わせて、これまで感じたことのない感覚がカズエを襲う。
「カズ……」
秋哉はしっかりとカズエのことを抱きしめている。
まさか、これが目的だったのかしらと、ふと思った。
これまでオトモダチでしかなかったカズエと秋哉。
この関係を、秋哉ももどかしいと思っていてくれたのだとしたら、何かしらのきっかけでふたりは新しい関係になれる。
カズエと新しい関係を築きたくて、秋哉がGにあんなに大げさな反応をしたのだとしたら……。
カズエは自分が耳まで真っ赤になるのを自覚した。
秋哉は今日、今までの関係をぶち壊そうとしている。
不器用だけど男の子らしい手段で、カズエとの関係を新しく作ろうとしている。
かなり強引だけれど、カズエも秋哉のことが好きだから、きっと拒めない。
「アキ……」
でもちょっと怖いなと思ってしまうことは許してほしい。
なんたってカズエは初めてなのだ。
秋哉の経験値なんて知らないし、知りたいとも思わないけれど、でもここから上手いことリードしてくれれば――、
「カズ……、どこにいる」
「……ここにいるよ」
自分の存在を教えるように、回された秋哉の腕をポンポンと叩いてやる。
すると、
「チゲーよ、ヤツだよ」
「へ?」
「ヤツはどこに飛んだ? まさか見失ってねーだろうな」
「……」
秋哉は終始Gのことしか考えていなかった。
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