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カズエは後ろに足を跳ね上げて、秋哉のスネを蹴っ飛ばしてやった。
「イッテー」
秋哉はスネを抱えて飛びあがったけど知るもんか。
お陰でしがみついていた秋哉の腕からも逃れられた。
「知らないわよ、あんたも探してよね」
「おお、その前にラップだラップ」
ハンバーグに不器用そうな手つきでラップをはる秋哉を尻目に、カズエは新聞紙を固く丸め直す。
めちゃくちゃ力が入って、このまま暴漢でも倒せそうな武器になった。
「いた! あそこだ」
嫌いな人ほど先に目に入るのか、やっぱり秋哉がいち早く見つけて、カズエにGの位置を教える。
カズエは怒りの感情そのまま新聞紙を振り下ろす。
「ヤッタ、ナイススイングだカズ!」
これ以上ないくらいのさわやかな笑顔で秋哉は褒めてくれるが、なぜだろう、カズエはちっとも嬉しくない。
「何ぶすったれてんだよ」
ふくれるカズエに、秋哉は困惑を隠せない顔で聞いてくるが、わからない秋哉の方が悪い。
乙女の一大決心を台無しにした秋哉の方が、絶対に悪い。
「そんな、人でも殺しそうな顔してねーで、ヤツも片付いたんだし、メシにしょうぜ」
呑気にラップを剥がそうとする秋哉に、カズエは八つ当たりのように、
「冗談じゃないわよ。手ぇぐらい洗わせてよ。洗面所どこよ」
怒鳴り返していた。
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