佳境に入ったパーティ

5/8
70人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
しかし、 「あいつ、動かなくなった」 「え?」 「すぐそこにいる」 秋哉はドアを睨みつけたまま恐ろしいことを言う。 「……そこにいるって?」 まさかと思って震える声で聞くと、 「オレらがここにいること、もうバレてる」 「!?」 恐ろしさのあまり息が止まった。 確かに、秋哉もカズエも、別に洗面所に隠れていたわけではない。 カズエは誰かが家に入ってきたのにも気がつかなかった。 だから、侵入者の方が先にこちらに気づいたのだとしても納得がいく。 でも、家人がいることがわかったならさっさと逃げればいいのに、もしやこっちが未成年なことを知っていて開き直ったのだろうか。 泥棒が今日は来生家に入ると決めていて、朝からジッと家の様子をうかがっていたのだとしたら、その可能性は十分にある。 来生家の家族構成を熟知の上、そしてカズエのことを冬依と勘違いしていて、夏樹も鈴音も春一も出かけていったのを確認してから、家に入ってきたのだとしたら……。 ふうっと血が下がる思いがして、カズエは気が遠くなった。 緊張のあまり、貧血を起こしたのだ。 腰が落ちるのを秋哉が支えてくれたが、カズエはとうとう床に座り込んでしまう。 「アキどうしよう。私たち、どうなるの」 さっきまで走って逃げるつもりだったのに、もう足に力が入らない。 秋哉にすがる声も、震えのあまりガチガチと歯が鳴っただけで言葉にならなかった。 「――カズ」 秋哉は、カズエの名前を呼んだ。 「ダイジョーブだ」 顎をあげれば、秋哉はカズエにいつもの笑顔を向けてくれる。 「任せとけ。オレが必ず守ってやる」 秋哉は座り込むカズエの頭にポンと手のひらを乗せると、くるっと踵をかえす。 そのまま侵入者の待つドアの方へ向かって行こうとした。 思わず、秋哉のTシャツの裾を掴んで引き止めるカズエ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!