70人が本棚に入れています
本棚に追加
これは青天の霹靂、どんな鬼の霍乱かと、すぐさま、
「うん、朝からがら空きよ。スケジュール真っ白」
と答えようとして、
『いや、それはどうよ』
慌てて自分を押しとどめる。
花の女子高生がクリスマスイブに予定無しを嬉々として公言するなんて、ちょっと虚しすぎやしないか。
ここは、モテる女子を装って、
「どうしよっかなー」
などと手帳など繰るフリで、ちょっともったい付けるのがセオリーじゃないかと考えかけて、すぐさま、
『イヤイヤイヤ』
首を振る。
そんな女子の計算を働かせようものなら、面倒くさがりの秋哉のこと、
「忙しいのか、ならいいや」
とさっさと前言撤回してしまいそうだ。
秋哉に何があったのかは知らないが、こんなチャンスは二度と訪れるとは思えない。
秋哉の気の迷いでも何でもいい。
素直に申し出を承諾して、秋哉とのクリスマスの時間を確保してから、その後、女子の打算を発揮すればいいじゃないか。
例えば、秋哉が着てきた服にだとか、連れていってくれるデートコースなんかにケチをつける。
どうしようもなく不器用でオクテな秋哉のことだ。
きっとロマンチックさの欠片もないデートになるだろうことぐらい予想がつくので、それを告げたときの秋哉の困った顔を想像すれば、
「ふふ」
思わず笑いが出る。
そんな秋哉を、カズエはふがいないと思うと同時に、愛しくてたまらないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!