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秋哉は、
『行くぞ』
目で合図すると、廊下に続くドアを勢いよく引き開けた。
やるなら先手必勝、一気に片をつけてやるとばかりに、秋哉はカタパルトの勢いで殴りかかっていく。
「テメェ覚悟しやがれ!」
「キャアァァッ!」
しかし、あがったのは甲高い悲鳴。
ついで、
「イヤーッ、ヘンタイ! こっち来ないで!」
秋哉の方がヘンタイ呼ばわりされている。
「!?」
「ごっ、ごめん」
条件反射なのか、はたまた悲しい習性なのか、秋哉はとっさに謝っている。
『どうなってるの?』
カズエが慌ててドアから顔をのぞかせれば、廊下には赤いサンタ衣装を着た若い女が座り込んでいた。
女の傍らには潰れたケーキの箱。
思わず首を傾げるカズエに、
「チガウんだ、オレはベツにそんなつもりじゃなくて……」
ちっとも悪くないのに、焦った顔で言い訳をしている秋哉。
確かに、女は肌もあらわなオフショルダーのミニスカート姿で、とても無防備だ。
楽しいパーティを盛り上げようとする、健気なミニスカサンタ。
そして、そんな女性を壁際にまで追い詰め、覆いかぶさるように拳を振り上げている秋哉の方が、一見すればただのDV男。
すると調子に乗ったのか女は、
「……急にこの人が襲いかかってきて」
なんて言い出した。
ピンクの唇をぷるるんと震わせて、ばっちりマスカラに縁どられた涙目で非難するように秋哉を睨む。
秋哉は、
「――うっ」
と苦しそうに呻いた。
だけど、
「アキ、あんたの知ってる人なの?」
カズエが尋ねれば、秋哉は何が何だかわからないと、
「いいや、全然知らねーヒト」
首を振って答える。
だったら、
「ヘンタイはあんたの方でしょ。不法侵入のオ・ネ・エ・サ・ン」
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