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パーティ準備
カズエは来生家のキッチンに立ち、ボールに入った挽肉をこねている。
ふと、コショウを入れ忘れたことを思い出し、
「アキー、ここにコショウかけてよ」
声をあげれば、
「おお、どこだ?」
秋哉がヒョコヒョコやってきて、
「どんくらい?」
と頭をのぞかせる。
その顔の近さに少しドキリとして、
「パッパでいいよ、パッパで。適量っていうでしょう」
照れたのをごまかすために、ぶっきらぼうに言った。
「んだよ、いい加減だなー」
ブツブツいう秋哉を尻目に、ふと横を見れば、秋哉がテーブルで作っていたハタが目に入る。
つい、
「あたしはモミの木を作ってって言ったのに、何でハタになってんの?」
モミの木をお願いしたはずなのに、お子様ランチの上に飾るようなハタになっている。
何がどうなってそうなったのか。
すると秋哉は、
「どっちでもいいじゃん。別に食うわけじゃないんだし」
言い訳しながら力任せにコショウの瓶を振って、
「ぶぇっくしょん、くしょん」
盛大なくしゃみなんか始める。
「……ああもう、汚ったないなぁ」
カズエは文句を口にして、挽肉の入ったボウルを脇に抱えるようにして唾を避けた。
不自然にならずに、目を逸らせられただろうか。
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