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夏樹の言うことはよくわからないが、
「じゃあカズエちゃん、今日はちょっと無理だけど、また今度教えるね」
鈴音が言ってくれたのは嬉しい。
「はい、お願いします」
料理を教わるという口実で、また来生家に来られる理由が出来たのだ。
「うん、私もレシピ考えておくけど、今日は本当にごめんね」
重ねて謝ってくれる鈴音は、今日はかなりオシャレした格好をしている。
ワインカラーのワンピースにファーのボレロ姿。
クリスマスカラーのコーディネートはこの季節にぴったりだし、フワフワした白いボレロがとても可愛い。
手にはコートを持っているから、これからデートだろうか。
でも婚約者の一番上のお兄さんの姿は、まだこの家の中で見ていない。
『じゃあ一体、誰とデートするの?』
不思議に思っていると、
「さっさと行けよナツキはよぉ。今夜もどっかで女が待ってるんだろう」
秋哉がまた夏樹の足を蹴っ飛ばしにいく。
「この家にはカズだっているんだ。スズネのお守りぐらいオレでも出来るぜ」
「お守りってアキ……」
失礼な言葉づかいに眉をひそめたが、鈴音は変わらずニコニコしている。
どうやら秋哉の勘違いした物言いにも、すっかり慣れている様子だ。
そして夏樹は、どうやら違う女性とデートの約束があるみたいで、
「ヘイヘイ」
なんていい加減な返事をしながらコートの袖に腕を通した。
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