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大手事務所だったらそれでも端っこに置いてくれるかもしれないけれど、中堅事務所としてみれば一利もない子役を置いておく理由がない。金を産まないにわとりには、誰だって用がない。
お母さんは心底悔しがっていたけれど、私は泣くことも笑うこともなく、ただ今までお世話になったマネージャーさんと社長さんに頭を下げるだけだった。
フレームの向こう側はいったいどうなっているのか、私は最後までわからないままだった。
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「……ん」
喉を鳴らす。寝ていたせいか、痰が絡んで声が通らない。
窓は開けっぱなし、カーテンがそよいで、窓の外の影がタップダンスを踊っているのを見せてくれていた。
既にチャイムが鳴ったのか、教室には誰もいない。誰も起こしてくれなかったんだ。
私の机の上には、かろうじてプリントが乗せられ、私の寝相で落ちないように筆箱をおもりにして置いてある。おもりを付けるくらいだったら起こしてくれればよかったのに。そう思いながら、私は口元によだれの跡がついてないかを確認し、次に時計を確認した。
ホームルームはとっくの昔に終了。掃除も終わったらしいと判断し、私はのそりと起き上がった。ポーチの中から鏡を取り出して、自分の顔を見る。机に頬を引っ付けて眠っていたせいか、よだれはついてなくても、机の跡は付いている。それに私は「あちゃあ……」とごちた。
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