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「シュウは、アラムが嘘をつくような人だと思う?」
「ううん」
「わたしもそう思うわ」
彼女は僕の答えに優しく頷いた。温かい気持ちが僕の心に充ちていった。彼女の銀色の瞳がほんのりと潤んで細められる。柔らかそうなほっぺたが薔薇色になって、それは素敵な表情だと僕は思った。
「血なんか繋がってなくても家族になれるのよ、大事ってだけで。シュウの大事な人は誰かしら?」
「アラム! それから、お姉さんもだいじだよ!」
アラムと彼女が結婚した次の年は、本当に素晴らしいものになった。
なぜかって、僕に妹が出来たんだ。
髪も瞳もアラムとそっくりだけど、その甘い顔立ちは彼女にそっくりだった。七歳の僕は子供心に思った。こんなに愛らしい赤ん坊が成長したらどうなるんだろうと。
想像の中の妹は、義母のようにすらりと大地に立ちこちらへ振り向くと柔らかくほほ笑んだ。
僕は馬鹿だったんだろうな。
その女の子にすっかり心を奪われてしまったんだから。
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