第一章 妖精と呼ばれし娘 一、愛を探す少女

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 数えで十になろうかというほどの少女は、その体格に見合わない大きな玉座に鎮座し、乳母や侍女になだめすかされながら泣くことで、彼女なりに深い悲しみを表していた。大きな襟と広がる袖口にたっぷりとレースをあしらった、ただの子ども服とは格のことなる、黒くとも豪奢なドレスは、彼女の心を和ませはしなかった。そして彼女は、いかにも少女らしく、たっぷりとした金色の髪を高い位置で二つにまとめていた。そしてその小さな頭にはおあつらえ向きではない王冠が、そのてっぺんから落ちてしまいそうなほどに首を縦横無尽に嫌々と振り、その度に涙の滴を辺りへとまき散らした。 「どうして、じいやはわらわをおいていったのじゃ!」  突然、思い出したかのように叫びながら、少女は立ち上がった。ぐらついた王冠を見て大臣がまなこを見開いた。 「じいやがいないと、わらわも、この国もおしまいなのに!」 「ロザリンデさま! 女王さまがそんなことを言ってはなりませんよ!」 「だって、わらわじゃダメじゃから!」  黒いヴェールを振り乱しながら、わんわんと一層泣き喚く少女を、同じく黒ずくめの装いに身を包んだ乳母がなだめて座らせた。小さな安堵のため息が玉座の間のあちこちから立った。乳母はしみ一つない真っ白なハンカチーフで、幼き女王ロザリンデの涙を押さえてやっている。 「女王さま、どうか静まられてくださいませ。女王さまがそんな風じゃあ、摂政イグナートさまは安心してお空の国へ旅立てのうございます」 「でも、でも……! わらわにはまだじいやが必要だったのじゃ。変わりなぞ居らぬのじゃ!」     
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