ファイナリスト

ここまで辿り着くには長い年月と計り知れない多くの苦渋に満ちた試練が彼を待ち受けていた。

それを克服するために幼い頃から指導してくれた父親やコーチ、それに家族には多大な負担を掛けてしまった。

特に中学生までは人並み以上に反抗期が続き、テニスの成績はおろか人間としても全然成長できていなかった。

その為周囲の人には沢山嫌な思いをさせてしまったが、今彼は幼い頃から抱いていた夢を実現させようとしていた。

昨年同様、このウインブルドンでは予選から勝ち上がり、厳しい3回戦を必死の思いで戦い抜き、何度も崖っぷちに追い詰められては這い上がり、一瞬諦めてしまおうかと何度も思ったが、念願叶って漸くここまで辿り着いた。

特にベスト8を決める準々決勝ではもう駄目か、これでこのコートともおさらばといった苦境に幾多も立たされた。