『 ファイナリスト 』

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歴代チャンピオンの颯爽たる姿で写る晴れやかなポートレート掲げられているクラブハウスの廊下を歩き、19段ほどの階段を降りた所で開かれた2つの扉を抜け、緊張感を押し殺した態度で彼は先に歩みを進めた。 そして、狭い通路を抜けるとそこには2人のファイナリストを待ち遠しく見守る由緒あるセンターコートが視界に飛び込んできた。 嘗て経験したことのないその光景はまるで深緑に染まった高山が小さな彼に向かって押し寄せて来るようだった。でも、初めて経験するセンターコートの柔らかい芝生の感触を足元で味わいながら歩を進めると、恐怖心よりも得難い光景、待ちに待った場面にやっと巡り逢えた喜びを肌で味わった。
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