『 ファイナリスト 』

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こうして前年度チャンピオンと肩を並べて広いセンターコート内をゆっくり歩く時、見知らぬ大勢の観光客席からの温かい声援を耳にすると、彼は自分の座る椅子にラケットバック等の荷物を置く際、耐え切れずに思わず涙が零れ落ちそうになった。 いや、実際には感極まって恥ずかしながらも少しの涙が頬を伝った。直ぐに持っていたタオルで誤魔化すように頬を拭ったので、誰の目にも気付かれなかったはずなのだが・・・。 そして、腰を掛けて観客席を一度見回した時、何故か誰かに見守られている、誰かに背中を押されているといった不思議な感覚を抱いた。 その時は父親かコーチたちといった信頼するスタッフが見守ってくれていると感じたからなのだが、どうやらそれだけではなかった。
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