『 ファイナリスト 』

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まだ試合が始まって、凡そ15分が経過したところだが、第1セット、2-1と今のところ立花雄一朗が対戦相手を一歩リードしている。 格式のあるグランドスラムの大会にしては昔からそうだったが、少し貧弱そうにも見えるどこにでもありそうな深緑の二脚の椅子に対戦相手と審判台を隔てて並ぶように座り、緊張のためかいつもより早めに流れ出す額と両腕の汗を丁寧に拭いながら彼は用意してきた飲料水をペットボトルごと渇いた喉の奥に流し込んだ。
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