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4 神童
最近“彼女”が出来た、近くの私立大学との合コンで。中古の車で須磨へドライブ。
「いやあ、ラッコ可愛い!」
いや、可愛いのはキミやな、小さい手でラッコが貝を叩くのを真似。
「珠樹、た・ま・き!トンカツ1枚かあ?」
ほぼ怒鳴り声で、豚肉叩く僕の母親の手の大きいこと、大きいこと!勤め先の高校で生徒から『横綱』とアダ名されるだけのことはある。
「佐久間さん、高校では“神童”言われてたんですってね」
尊敬の眼差しをくれる。
「だれや、そんなホラを吹くのは」
「ホラやて、謙遜ン」
確かにホラやない。大阪でもトップの偏差値の高校に一番で合格した。京大にも簡単に入った。それでもなあ・・・
彼女を送ってから天王寺の家へ帰ると
「珠樹、また明治屋、行って」
「またかいな」
文句言いつつ台車を片手に路地を行く。マンションから10分ほどで阪堺の表通りへ出ると立呑屋の明治屋、未曾有の高景気の華やかさとは真逆の。
「大ちゃん、いつもの”お迎え”やで」
常連客に言われて
「はい、はいはい、はい」
返事をしてるのは入り口付近に座って寝てる大ちゃん、僕の父親。母親同様教師で歴史を教えてる。
「一杯ヒッカケていけや!」
デカイ声をかけてくれるのは近くの私塾の塾長で、
「コイツらも呑んでるぞ!」
と、これまたイカツいオッサンはその塾で教えてるタニヤン先生。二人は父親の同級生。コイツらと呼ばれてる二人はヨシタカとモトイ、僕の同級生で同じ京大の一回生。
「未成年に飲ましたらアカンで」
半笑いの僕に、
「またまた未成年が”やったらアカンこと“してきたくせに」
ヨシタカとモトイは抱き合ってお互いの身体を触って周囲のオッサン達を喜ばせる。
この人達もかつては”神童“と呼ばれてた。父親達三人は京大で、ヨシタカやモトイはそれぞれの地域の模式では一番を明け渡したことはない。
二人に手伝うてもろて父親を台車に載せて連れ帰る。
「最近、道が良なった(良くなった)からオッチャンも落ちへんなあ」
ヨシタカがたまに父親の足なんか抑えてくれる。
「でやった(どうだった)?同級生なんかと“ヤる“のは初めてやろ?やっぱ慣れてない感じ?」
「あんまし変わらんなあ、いつもの“姉ちゃん”らみたいに手慣れた感じでラブホの装備もよう知ってるみたいやった」
「ああ、なあぁ、『私初めてェ』なんて
感じの女が”バリバリ”やったり
するってオカンも言うてたわ」
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